「ピーターのくちぶえ」作・エズラ=ジャック=キーツ 訳・きじまはじめ 偕成社

もしかしたら、読み聞かせをした娘よりも、読んでいる親の方が好きになってしまったかもしれない作品。

コラージュ等色々な技法をもちいた、音楽で例えるとジャズの様な雰囲気の、おしゃれな色彩感覚の絵が、大人の目も楽しませてくれる作品です。美しさもそうですが、何よりも登場人物の少年の子供らしい行動の数々が、子供の世界の豊かさを思いださせてくれます。毎日沢山の予定を子供に入れて、口を開ければ、宿題、とかあれやって、とかばかり話しているような日常をとても反省してしまいました。私自身は子供の目線におりることがあまり得意な方ではないのですが、この絵本を読むことによって、ほっと一息を突いて子供がどんな世界を見ているのか、その世界が大人のきまりでは割りきれないどんな素敵なものなのかを思いださせてくれる絵本でした。

エマおばあちゃん 文 ウェンディ・ケッセルマン 絵 バーバラ・クーニー 徳間書店

娘に読んで、「一気に」に好きになった本です。おばあちゃんが、今まで秘めていいたクリエィテビティを炸裂させて、成功していく過程が、幸せへの過程とぴったりと重なっていいるところが、心から幸せな気分になる一冊。私自身が絵を描くのが好きだからかもしれませんが、特別な一冊になりました。絵そのものも素敵。自分の心に寄り添って、自分らしく生きていくことの偉大さを感じられる絵本。子供の人生もこのように花開いてほしい。

「おやすみなさいフランシス」(世界傑作絵本シリーズ) ラッセル・ホーバン著 ガース・ウィリアムズ イラスト 福音館書店

子供の頃に読んで、妙に記憶に残ているので、手に取りました。特に記憶にあるのは、ガウンが「おおおとこ」に見えるページと、天井のひびのシーン、そして、最後に眠りにつくシーン。記憶に残っているから良い絵本だったのかなと思って手に取てみたのですが、要は実は子供心に結構怖かったのだなと思いました。このこわさは、想像力のこわさ。

夜よく眠っていた息子が、一時期眠れない(「なんでかわからないけれど、怖くてねむれないからそばにいて」)という時期があり、それがちょうどこのフランシスに重なり、子供に想像の世界がひろがる時期、夜との触れあいが始まる次期があるのかなと思った次第です。(同様のテーマの本は他にもあるので。)想像していると怖いけれど、実際には、ガウンだったり蛾だったり、子供が子供なりに、夜の世界と触れあっていく過程が印象的な本だったのだなと思いました。フランシスのお父さんとお母さんがゆったりと切り返すのが良いところ。フランシスも最後にはすっかり疲れて寝てしまうところが微笑ましい。

ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん(世界傑作絵本シリーズ スウェーデン)エルサ・ベスコフ 福音館書店 

きれいな挿絵の絵本で、(リンクの写真では、その魅力が少し伝わりにくいのですが。)絵に惹かれて何度も手に取っています。とても惹かれる本なのですが、長く語られている本なのだと今になって知りました。

絵本の要素には、物語の魅力や、挿絵の魅力などありますが、この作品は、とにかくこの絵に惹かれます。それが物語の内容にぴったり。小さくなったプッテと、そのまわりにいるこけももたちなどの可愛らしさに、物語の味わいが一層深まります。

一本一本の筆さばき、彩り、それらがその後ろに隠れているどれだけの文化を伝えることでしょうか。子供のころの、まっさらな心に色々なイメージを運びこむ、この絵本を読むという行為がどれほど重要なことか、ついつい考えてしまいます。

ここのところ、何冊が立て続けに違った種類の絵本を読んでいるなかで、よい絵本というのはどんなものだろう、と考えることが多かったのですが、長く語り継がれる作品んでいるなかには、ものすごい引力を感じます。

その魅力は、絵だけ、物語だけ、などと切り離せません。一つだけ思うのは、マーケティング等で調査されたものではなく、その作家さんの物語世界がひろがっていること、そしてそれがその作家さんの生きる背景の文化をすくいとっていて、矛盾するようですが、最終的には普遍性があること。頭で作られたものではない、物語の世界がひろがっていること。そんなことが大切なのかなと思いました。

大衆に受けるということよりも、個人の作品世界を深めるということの方が大切なのではないでしょうか。人間の奥底に広がる、深くて濃い世界を気忙しさに紛れずに見つめていくような生き方をしていきたいなと、個人的には思います。

「いぬのマーサがしゃべったら」スーザン・メドー作・絵 フレーベル館

ここのところ、数ある絵本のなかから子供がまた読んでとせがむ本。

子供の絵本の読み聞かせをして思うのは、世界の名作といわれている絵本や、長い間語り継がれている絵本は、読んでいる大人も楽しめるということ。話は単純な時もあったりするのに、なぜか手に取るとワクワクする本。そのワクワクはいつもどこから来るのかなと思います。

似たような内容の本でも、ワクワクする本としない本があったり。勿論、絵の素晴らしさ等が関係することもありますが、やっぱり何といっても精神が自由に舞う感じ、そうして、登場人物の人間力の強さ。勇気や、人を思いやる気持ち、人間への根本的な信頼、ユーモアなど、そういう本に子供の頃の心がよみがえってワクワクするのかもしれません。

(絵本で時々ある、何かを学ばせようとしたり、お説教くさかったりするのは、やはり読んでいてもつまらない。)

まあ、たまに、何でこの絵本がこんなに好きなのか分からないというものもありますけれど、それはそれで、その時期の子供の心に触れるみたいでとても楽しいです。子供によって、好きになる本も全く違うし、読み聞かせで広がる世界って本当に広い。自分の子供時代を追体験するような気持ちの時も沢山あって、心がざわざわする時も沢山あります。

そんなはらはらどきどき、笑いと子供と一緒に感じながらこちらの本も読みました。この犬が話しができたら色々聞きたい!という気持ち、本当にわかる!とワクワクしながら読み進めた本でした。

DER GRÜFFERLO Alex Scheffler Julia Donaldson Macmillan Children’s Books

 

作者はスコットランドの方のようなのですが、こちらドイツでも大人気の作品。とても、とても人気があります。同作者の本も含め、何度も何度も子供達は読んでいるのですが、本日は、こちらを基にした人形劇を見に行きました。

Theaterzelt an der Bockenheimer Warte

人形劇の公演は、何とテントの中。チケットを買って中に入ると、土の地面に長いすが置いてあって前面上方に人形劇の舞台があります。ポップコーンが売っていたり、それはなんと言うか、サーカスの趣。大人も子供も8ユーロというのは、かなり高いと思ったのですが、子供がこういうものをとても好きなので見に行ったところ、観劇スタイルがとても印象的でした。

日本でも、子供向きのお芝居はそうなのかもしれませんが、兎に角子供が自由に反応ができるし、舞台とかに話しかけたら、人形遣いの方も、それに上手く答えてくれるし、子供達はどんどん盛り上がります。大声で登場人物に「ちがうよー、グルッフェローは本当にいるってばー」って声はりあげて登場人物にはりあげたり、大喜び。とてもよい雰囲気だなと、関心してしまいました。自分の子供時代に、こんな風にのびのび盛り上がって劇を見たことはなかったな、とちょっと思ってしまいました。なんといっても一緒に見に行った自分の子供の振る舞いにもびっくり。(とても真剣に叫んだり応答したりしている!)見に行ってよかったなと思いました。

それにしても、ドイツの子供の間でよく聞く言葉、「Angsthase!」が、劇場の掛け声でも響きわたりました。そのままの字面を読むと、心配性のウサギ、転じて「臆病者!」という感じなのでしょうか。こちらで生活していると、子供達の間でよくこの言葉を聞くのですが、ドイツの子育てで、なんとも印象てきなこと。公園でもなんでも、兎に角ちょっと難しめのことでもどんどん挑戦させること。心配してやめさせたりすると、親のほうが「Angsthase!」って言われてしまうことまで。そんな子育ての環境も、色々過剰に心配しないで子供の勇気を養う意味で悪くないよな、と思ったことでした。

としょかんライオン(海外秀作絵本17) ミシェル・ヌードセン ケビン・ホークス (イラスト) 福本友美子(翻訳)岩崎書店 

 この絵本を手にしたとたんに、すっかり好きになり、子供に読み聞かせました。多分子供より、親の私の方が好きかもしれません、笑。
 
 お話の筋よりも、ひたすらに図書館とそこにいる人達が大好きなライオンが、最初は驚かれながらも受け入れられて、ゆったりと佇む姿がとても好きです。あたたかそうなライオンに凭れて、私も朗読会に参加したい。その静かな雰囲気と、友達のために、静かに相手を思うライオンの行動が、心にゆっくりと染み入ります。子供には、もう少し大きくなってからもう一度読んでみようかと思います。

ネコのホレイショ エリナー・クライマー こぐま社

色々な場所から借りてきた絵本が、家の中に今何冊かあるのですが、その中から特にこれを読んで欲しいと子供が持ってきた本です。やはり小さい子供には、動物が主人公の作品は魅力的みたいですね。

しかしながら、飼い猫もしくは飼われている動物が怒って家を飛び出して、世間の厳しさを知った後、もどってきて飼い主と前よりもより強く結ばれるというパターンの作品が西洋に多いこと。子供の本でもこの本以外に猫、豚と同じパターンの作品を既に、ここ暫くで少なくとも2冊は読んでいます。

これは西洋の物語のパターンなのでしょうか。日本の昔話も、一寸法師や桃太郎など、旅にでて一回り大きくなって戻ってくるというパターンのお話が幾つもあったりするので、西洋世界を構築する一つのフォーマットなのかもしれません。よく考えたら、新約聖書の放蕩息子のたとえ話も同じようなフォーマットといえるかもしれません。

子供の頃にこういった物語の原型を取り入れていっているうちに、それが人間形成につながっていくと思うと、子供の頃に触れるものというのは、本当に重要だと空恐ろしくなってきます。また、私が子供時代の頃とちがって、こうやって色々な国の物語に触れている子供たちが将来、人生でどのような物語をつむいでいくのか、全く新しい時代となっているのだなという気がします。

あらゆる文明が混沌と混ざり合ったり、ぶつかり合ったりしている現在、子供の絵本の世界でも融和の原型ともなるような物語が沢山生まれてくるといいなと思います。

三びきのこぶた イギリスの昔話 ポール・ガルドン 童話館出版

三びきのこぶた には 2つパターンがあるようだ。
ぶたの兄弟が、別の兄弟の家に駆け込んで生き残るパターンと、
しっかりした家を建てないと、狼に食べられてしまうパターン。
こちらは、その食べられてしまうパターン。

子供に聞いたら、生き残るバージョンのほうが好きということだが、
こういう残忍な表現が子供の本に意外に出てくることが多い。
これはいいのか悪いのか、悩むところである。

最後に子供が、狼を食べるということは、狼に食べられたお兄ちゃんも食べてしまうんだね、
とつぶやいたそのきづきが一番怖かった、、、、。悠々自適に暮らす末の弟ぶたでありましたが、
賢くて生き残ってもお兄ちゃんは食べないで欲しいな、、、。と思う私でした。