「おやすみなさいフランシス」(世界傑作絵本シリーズ) ラッセル・ホーバン著 ガース・ウィリアムズ イラスト 福音館書店

子供の頃に読んで、妙に記憶に残ているので、手に取りました。特に記憶にあるのは、ガウンが「おおおとこ」に見えるページと、天井のひびのシーン、そして、最後に眠りにつくシーン。記憶に残っているから良い絵本だったのかなと思って手に取てみたのですが、要は実は子供心に結構怖かったのだなと思いました。このこわさは、想像力のこわさ。

夜よく眠っていた息子が、一時期眠れない(「なんでかわからないけれど、怖くてねむれないからそばにいて」)という時期があり、それがちょうどこのフランシスに重なり、子供に想像の世界がひろがる時期、夜との触れあいが始まる次期があるのかなと思った次第です。(同様のテーマの本は他にもあるので。)想像していると怖いけれど、実際には、ガウンだったり蛾だったり、子供が子供なりに、夜の世界と触れあっていく過程が印象的な本だったのだなと思いました。フランシスのお父さんとお母さんがゆったりと切り返すのが良いところ。フランシスも最後にはすっかり疲れて寝てしまうところが微笑ましい。

ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん(世界傑作絵本シリーズ スウェーデン)エルサ・ベスコフ 福音館書店 

きれいな挿絵の絵本で、(リンクの写真では、その魅力が少し伝わりにくいのですが。)絵に惹かれて何度も手に取っています。とても惹かれる本なのですが、長く語られている本なのだと今になって知りました。

絵本の要素には、物語の魅力や、挿絵の魅力などありますが、この作品は、とにかくこの絵に惹かれます。それが物語の内容にぴったり。小さくなったプッテと、そのまわりにいるこけももたちなどの可愛らしさに、物語の味わいが一層深まります。

一本一本の筆さばき、彩り、それらがその後ろに隠れているどれだけの文化を伝えることでしょうか。子供のころの、まっさらな心に色々なイメージを運びこむ、この絵本を読むという行為がどれほど重要なことか、ついつい考えてしまいます。

ここのところ、何冊が立て続けに違った種類の絵本を読んでいるなかで、よい絵本というのはどんなものだろう、と考えることが多かったのですが、長く語り継がれる作品んでいるなかには、ものすごい引力を感じます。

その魅力は、絵だけ、物語だけ、などと切り離せません。一つだけ思うのは、マーケティング等で調査されたものではなく、その作家さんの物語世界がひろがっていること、そしてそれがその作家さんの生きる背景の文化をすくいとっていて、矛盾するようですが、最終的には普遍性があること。頭で作られたものではない、物語の世界がひろがっていること。そんなことが大切なのかなと思いました。

大衆に受けるということよりも、個人の作品世界を深めるということの方が大切なのではないでしょうか。人間の奥底に広がる、深くて濃い世界を気忙しさに紛れずに見つめていくような生き方をしていきたいなと、個人的には思います。