「ピーターのくちぶえ」作・エズラ=ジャック=キーツ 訳・きじまはじめ 偕成社

もしかしたら、読み聞かせをした娘よりも、読んでいる親の方が好きになってしまったかもしれない作品。

コラージュ等色々な技法をもちいた、音楽で例えるとジャズの様な雰囲気の、おしゃれな色彩感覚の絵が、大人の目も楽しませてくれる作品です。美しさもそうですが、何よりも登場人物の少年の子供らしい行動の数々が、子供の世界の豊かさを思いださせてくれます。毎日沢山の予定を子供に入れて、口を開ければ、宿題、とかあれやって、とかばかり話しているような日常をとても反省してしまいました。私自身は子供の目線におりることがあまり得意な方ではないのですが、この絵本を読むことによって、ほっと一息を突いて子供がどんな世界を見ているのか、その世界が大人のきまりでは割りきれないどんな素敵なものなのかを思いださせてくれる絵本でした。

「すべて真夜中の恋人たち」 川上未映子 講談社文庫

何もない中から言葉を紡いで小説を創り出すというのは、難しい作業で、その難しい作業を殊更丁寧にして作り上げた作品世界。この作品世界に共感できるかできないかは別として、こういった世界を言葉で作りだせるのは、相当その世界観に、表現するものに自身やビジョン、もしくはそれを創り出す意義がないと出来ない作業だなと思いました。そういう意味で、この作家さんは(好きか嫌いかは別として)強いなと思いました。

何か所か、急に物凄い描写が出てきて圧倒されます。そのメリハリがすごい。人物の書き分けはあざといぐらいですが、よく最後にうまく集約されるものだなと思う感じでした。個人的には、終わり方だけが残念、、、。そこが一番重要なのかもしれないけれども、その最後の一ページがなければ良かったのに。

「人生を変えるクローゼットの作り方」ベティ・ホールブライシュ&レベッカ・ベイリー 訳・野間けい子

この本を、人生で必要としない人も世の中には沢山いると思うけれど、私には特別の一冊でした。服が女性の人生にどのぐらい関わっているのか、女性の人生っていかに変化が多いか、そして服がとてもプライベートで深くかかわっていると同時に、外に開かれる心の窓であるというところに、とても惹かれます。勿論私は洋服が大好きなので、サイズの話とか、服飾業界の話を読んでいるだけでもとても楽しいです。ただ、日本語のタイトルはもう少し違うもの方が良いのではないかなと思いました。どちらかというと、洋服を通して面白い人生を語っているのに、このタイトルだと内容を誤解してしまいそうな気がします。まあ、間違ってはいないのだけれども。