David Lynch: The Art Life (2016)  Jon Nguyen、Rick Barnes、 Olivia Neergaard-Holm

http://David Lynch: The Art Life (2016)

「ツイン・ピークス」等の監督で有名なデビット・リンチ監督のアートライフのドキュメンタリー映画。映画監督で有名な人だが、その作品も高く評価されている。その、アート一筋の生活をドキュメンタリーのカメラが迫る好作品。

映画を見るだけで、本当に必要に迫られて作品を作り続けているというのがひしひしと伝わってくる。また、その職人といっても良い手の動き、制作過程を見ていて、本物のアーティストだなと思いました。

とはいえ、こんなに才能も努力も時間も費やすなら、私なら他の作品を作りたい!と叫びたくなるほど、彼の作品表現はなんと言うか人間の暗部に迫る。実の父親が彼のアトリエを訪れた時に、「『子供はつくるな』と言われた。父には私の表現方法がわからなかった」と、笑う姿が印象的でした。(その直後に子供ができている。)親が子供のことを病んでいるのではないか、と思うほど差し迫った表現であると言うところが本当にすごいと思う。

実は、2007年にパリのカルティエ現代美術財団で開催されたデビット・リンチのドローイング等が展示されている展覧会を見に行ったことがあるのですが(もうそんな昔とは!ものすごく大盛況だったのです。)その時に、私は彼の実の父のようにすっかり騙されてというか、本当に病んでいる人かも、なんて思いながら作品をみていました。

今回の彼の実父に対するコメントをよんで、やっぱり本当に病んでいる人と、それを表現する人とは、近いようで、程遠い。また、表現をするということに対しての激しい自覚に驚愕しました。

ミケランジェロ等、本当のすごいアーティストのドローイング等を見ると、線一本をとっても、そこにどうしてもなければならないと言うような、逼迫した存在感を感じるのですが、デビット・リンチの作品も、なんだかそこに人が存在するような、絵ではない、すごい迫力を感じる作品で、好きではないですが、とてもショックを受けたのを覚えています。

ですので、今回の映画を見たときは、なんだかものすごい納得感がありました。毎日毎日ひたすら作り続けている、その年輪が刻まれている。何だか目をそらしたいけれど目をそらせないようなすごい存在感を発する作品が出来上がる過程を見るのがとても面白かった。

ご本人の声も、姿形も作品と同じようにものすごい存在感があるので、ドキュメンタリー自体が、もしくはそれに映写されている彼自体が、彼の映画みたいでした。

それにしても、こんなに才能と技術があったら、私ならば他のものを作りたい、、、と何度思ったことか。(そしてそんなののだときっと芸術は成立しないんだよね)久しぶりに人間の精神のほの暗い深い深い底を覗くような作品に出会いました。

為参考リンク http://www.hikarie8.com/artgallery/2012/04/post-1.shtml

https://www.fondationcartier.com/#/en/art-contemporain/55/publications/289/publications/160/david-lynch-works-on-paper-limited-edition/