情報を活かす力 池上彰 PHPビジネス新書

 前回の読書に引き続き、情報を活用する方法の模索。池上氏の著書の最大の特徴は、庶民の味方という雰囲気。読みやすさ、わかりやすさ、親しみやすさ。かといって、情報量が少ないわけではないと、個人的には思っています。但し、分かりやすさの背景に省略されているものもあると思うので、興味がある事柄は、更に深堀りしていく必要はあると思う。色々な分野の概要を知る、もしくは、取っ掛かりとして手に取るには良いと思います。ビジネス本は、高邁だったり、専門的過ぎて、分かる人にわかればいい、という雰囲気のあるなか、池上氏の、徹底的な読者に寄り添った姿勢が何よりも人気の秘密なのだと思います。そこが、伝える力を徹底的に鍛えられた池上氏の魅力であり、今回の著書にも活かされている点だと思います。

 前置きが長くなってしまいましたが、本の内容に関しは、情報収集に関しては、今までのやり方で、大丈夫そうという安心をえました。要するに、多分誰もがしているような方法だと思います。但し、プロのそれは、徹底しているということがわかります。愚直な作業の積み重ね。

 具体的な情報源を記載されているのが親切。

 ノート術等を読んでも思いますが、こういうのは、一つのやり方を見つけたら、兎に角続けることが本当に重要だと思います。ある時期から、蓄積されたものに価値が出てきて、急速に利用価値が上がる、もしくは基本的な地図が出来上がった時点で、物事の理解が格段に拡がると思うので、複雑な方法でなくてもいいから、途中で迷いがでても、続ける意義があると、この本を読むことによって、改めて実感できたのが収穫でした。特に、「問題意識をもつ」ことにより情報が集まってくる。「何事も基本をおさえる。(その為に、読書で下地をつくる。)」そのことによって、情報の理解が深まる。「そのジャンルの『定本』を見つける。」等はいつも感じていることでしたので、腑に落ちました。

 一つ面白いのが、幾つかの本を並行して読んでいると、同じことを述べている人がいるということです。それは、それぞれがそれぞれ参照にしているのかもしれませんが、結果的にそこに行き着くということもあるかもしれません。今回、「本を並べ替えること」が、前回読んだ、「読書を仕事につなげる技術」と同じアイディアであること。(もしかしたら定本を見つけるというのも同じ発想。)等、極めていくとわかる、基本的なこともあるのかもしれません。

 ただし、本著を読んだ最大の目的は、まさにタイトルにある情報活用術。私の様に、ただインプットが好きで続けているうちに、インプットしても活用できないという問題にぶち当たる人はあまりいないのではないかと推測するので、(通常はきっと、ビジネスをしっかりと持っていて、それに伴い情報を収集していると思われますので)。やはり最後には、情報の活用方法は、どのような仕事をするか、どのような仕事を作っていくかという問題に直結していきます。池上氏の場合は、ジャーナリストですから、知ることは、既にビジネスに直結しています。ですので、ジャーナリスト以外の方が、どの様に情報を活用するかという意味で本書を読み進めたら、あまり答えはないかもしれません。

 むしろこの本の、もっとも良い部分は、情報整理術の箇所と、情報発信術(というよりも、発信するための文章術)の箇所だと思います。長年ジャーナリストとして活躍されたかたの基本的な姿勢がわかり、この箇所は読むと簡単そうですが、経験値のある方が書いていらっしゃるので、説得力がありました。

 そう、この本は全般的に好きでしたが、それは本の内容ではなく、きっと多くの人が感じているであろう、池上氏の読者に対する尊重の念が理由かもしれません。

 長年の取材や、実態のある生活人たちに触れている経験に裏打ちされているもの、テレビでの仕事における、発信することのことの大きさを理解していること、が人気の秘密なのだと思います。個人的には、本屋がとっても好きという箇所に、一番共感しました。

以下、個人的に役に立った情報
・「日々ニュースに接している時に自分の中にわいた、『なぜ』『どうして』という素朴な疑問を大切にする。」(その後、実際に調べる)
・「『自分の頭で考える時間』を意図的につくる。(反応が良くないときは、伝え方が悪いケースがある。)
・「自分に基礎知識のない分野で、これから注目を集めそうなテーマが出てきたときは必ず読書で下地をつくる。」
・「何事も、基本を押さえておけば、後の理解は楽になる。」
・「面白い本を読んだら、その面白さを人に説明してみよう。(ただし面白いという言葉は禁句。)」
・「読んでいる途中でも、『この部分をどう説明しようか』とアウトプットを意識しながら」
・「日米の情報感度の違い」の項目全体の内容。情報感度の違いが実際にどのような結果を産んだかの分かりやすい説明。
・「統計データ」の見方の注意。
・文章の書き方、プレゼン方法の全般。
・「誰に伝えようとしているのかを明確にする」
・「大きな数字は、身近な数字に置き換えてみよう」

 

外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術 山口周 KADOKAWA/中経出版

思えば数年前に本田直之氏の「レバレッジ・リーディング」を読んでから、読書術の本を幾つか読むようになりました。現在の仕事の現状が変わらない中、インプットはいつもしているけれど、一体何の為にしているのか、わからなくなるほど、現状が変わらない。というジレンマで、インプットしたものの、アウトプット、もしくは仕事への活用方法をひたすら考えるようになったのです。

実は、昔はいわゆる文学や教養系の本ばかり読んで、ビジネス本にはあえて距離感をとっていたのですが、今思えばなんと頑なな、視野の狭い姿勢だったのだろうと思います。若い頃に、もっと真剣にビジネス本を読んでいれば、より戦略的に生きられたのではないかとも思います。

同時に、文学や芸術が好きなのですが、そういったものと、ビジネスの世界と共存できないのが、その二つの世界がいつもパラレルで、結びつけられないのが、はがゆいという心境です。

こちらの本も、そんな、インプットを何とか仕事に生かしていける方法がないかという葛藤から読み始めました。基本的にはリベラル・アーツの本も薦められてはおりますが、ビジネスの世界において知的武装をするための読書術ととらえられる本です。まあ、20代で読めればよかったかな。今読んでも人生や仕事に影響を与えるには手遅れ的な件もチラホラみうけられました。

まあ、大量の新刊を読むよりは、古典の良書を読む。但しただの読み方ではなく、隅々まで精読する。というのは、ここ何年も語学の勉強が必須な中、数々の語学勉強本を買っても、結局一冊を深く勉強したほうがよい。(要するに一冊もきちんと理解しきれていない。)という結論に至っていたので、共感できました。

ついつリベラル・アーツ系の読書観に偏り勝ちな私自身の考えと、作者の意見が違う箇所もあるのですが、ビジネスのための読書術という点では作者はプロなので、色々素直に実行できるところは早速取り入れていきたいと思います。確かに本当に知的生産をする場合は、効率化も必要で、どれだけ生産性をあげるかという所が重要だと思うので、知的生産のために読む場合は、読み方が全て変わってくる、ということ自体がこの本から得た学びかもしれません。逆に言うと、ちょっと実行してやめては意味がない、長年の蓄積がいつかその人らしい知的生産の礎となるのだろうなと感じました。

作者の紹介する「ビジネス書マンダラ」は、早速参考にさせていただきたいと思います。若い頃からまじめに考えている方だったら、結構この中の本も読んでいらっしゃるだろうなというチョイスなのですが、私自身は、ビジネス書経験値が低いので、これから精読したいと思います。色々と勉強させていただきました。ありがとうございます。