「マノンの肉体」辻原登 講談社

読み始めてから、「久しぶりに文学作品を読んだ」とはっとしました。最近実用本や、インターネットサイトばかり見ていて、純然なる文学作品を読んでいなかったので、その文章の格調と、面白さに少しびっくりしてしまいました。最近の若い作家の方とも違う風格のある面白さ。今文学作品と呼ばれているものと何が違うのだろうかと考えながら作品を読みました。

きっと映画やドラマの影響、またエンターテイメントと純文学との境い目がうやむやになる中、今の作品はプロットを重視する作品が多く、文章が全く違うのではないかというのが、今のところの個人的な感想です。

収録されている作品では、個人的には「マノンの肉体」が心に残りました。ふとしたことから始まる話がいつのまにか、文章の意外な連なりによって、転がり、最後にあっという幕切れになる構成が、素晴らしかった。題材に使われている作品も鑑賞したくなる、手練れの作品。

時間をかけずに成功する人 コツコツやっても伸びない人 SMARTCUTS シェーン・スノウ 講談社

これは、、、何というか、Lifeshift とか、その手の本の系統。著者の経歴は面白く、この経歴が、本作にでてくる実例の裏打ちとなるとは思う。フィンランドの教育制度とか、今現在では既に有名になって聞いている内容も多い。文系っぽいビジネスの本。参考になる記述も沢山ある。が、きっと、最近では皆気がついていることでもある。SMARTCUTSという切り口にここに出ている実例を全て集約できるのかはちょっと疑問に思いました。現場を知る人だけに、ちょっと実例が多すぎて、読んでいると気が散るというか、少し疲れたかもしれません。

とはいえ、SMARTCUTSという発想は、今の時代の切り口として必要なものだと思います。なぜなら時代が変わっており、この方法で世に出た人が既に沢山いるから。日本の様に伝統的な慣習や、世間の圧が強くなかなか、発想することすら自由に出来ないお国柄では、この概念が認知されるのは良いことだと思う。ただし、一度概念をとりいれたら、何度も読まなくても良いとも思う。SMARTCUTSとショートカットは違うということも重要な指摘であります。

多分、私が翻訳調のビジネス本が苦手なので、少し読み方がきつくなっているかもしれません。コンピュータを例に、プラットフォームや、SMARTCUTSを説明した箇所は、わかりやすく理解が出来ました。

以下引用「『ショートカット』という言葉もあるがちょっと違う。(中略)ショートカットは単なる近道。『スマートカット』とは、本来時間をとられるべきではないところをスマートに、つまり賢く回避しながら、力をいれるべきところに力を入れて大きな目的を達成する技だ。」

 

 

<個人的に良くも悪くも、気になった箇所>

・「ライバルがひしめく『メジャーな場所』で実績をつくり、自分に箔をつける。」(言葉の表現が嫌いですが、何かを目指すなら、そのベストなものが集まっている場所に行くべきだと私も思います。)

・「一つの階段を途中まで上ったら、キャリアを変えて別の階段を駆け上がる。」(本当に実力がついていれば、キャリアを変えるときの効果がでる。)

・「自分の失敗でも他人の失敗でも、失敗を分析し、次のチャレンジに役立てる。」(これは今並行読みしているコーチング系の本にも出ている。兎に角失敗からも学ぶことが大切。「誰にでも、ネガティブなフィードバックをもらったとき、「ああ僕はダメだ」と人格否定として受けとめる脳内スイッチがある。それをパチンときってしまう術を覚えるのだ。」「ネガティブなフィードバックをもら」っても折れない。)

・学校でも職場でも「現状維持の天才」はいる。だが、ただその場にとどまっていることと、計画的に無駄な動きを最小限に抑えながら何かを学びとったり、上を目指したりすることは全く別物だ。(中略)ハイネマイヤー・ハンソンは、このコンセプトで退屈な科目を楽々とやり過ごした。やがて余った時間を、ウェブサイト制作技術の習得など自分にとって大切な作業に充てるようになると、めきめきと腕を上げたのである。

・「ダイソンによれば、米国の学校教育は、でこぼこの野原での運転技術ばかり指導し、ハイウェイの走り方を教えないようなものだという。最大の原因は暗記重視の教育にある。ほんとうに必要なのは、数学という道具の使い方を教えることだ。」

・「今はぷラットフォームの時代だ。計算能力よりも、独創性豊かな問題解決策を編み出すことのほうがずっと意味があるのだ。つまりプラットフォームを活用すれば、1から基礎を身につけるよりも早く基礎をマスターできるのだ。(中略)今の子どもたちなら九九ではなく、エクセルが使えるようになったほうがいい。全ての科目を隅から隅まで教えるよりも、プラットフォームの使い方を最初に教え、あとは本人が興味を持った分野を深堀させるほうが効果的だ。(中略)一方、プラットフォームの利点を徹底的に生かした教育制度を築いているのが、フィンランドなのだ。」

・グーグルには、社員が勤務時間の20%を自分のプロジェクトに充てる独自の勤務ルールがある。この『20%ルール』で生まれた新たなアイデアを形にしていた。20%タイムは、グーグルが独自に編み出した制度ではない。スコッチテープや、ポストイットなどでおなじみの3Mが考案した『15%』ルールの二番煎じだ。元祖である3Mの場合、勤務時間の15%を自分のアイデアの実験などに充てられるようになっている。そこから生まれたのがポストイットだ。(中略)こうした制度の根底にあるのは、(中略)いつビッグウェーブが来てもいいように、おもしろそうな海には足を突っ込んでおくのだ。このように最初から時間を割り当て済みの実験であれば、本業が圧迫されることもないし、新参起業にみすみすビッグウェーブを横取りされることもない。(中略)同業他社の成長が頭打ちになる中、依然として輝きを失っていない。」

・「成功になかなかたどり着けない原因の1つは、『ノー』と言えないことだ。過去のしがらみを断ち切れないのだ。これまで何度となく吊り輪渡りの例をだしているが、今自分がつかんでいる吊り輪から手を放さなければ、次の吊り輪に飛び移ることはできないし、勢いは途絶えてしまう。ラムはその弱みを捨て去り、シンプルに考えることで、しがらみや制約から解き放たれ、もっといい環境に飛び移ることができたのである。」

・地道な観察で、「運に出会えそうな場所」を探し、タイミングよく駆けつける。

・本業でなくても、「何かありそうなこと」には、とりあえず足を突っ込む。

・「だが、ホームズは知っておくべき点には全力を傾け、自分に欠けていた情報を明らかにするにはどうすればいいのか知恵を絞ったものの、それ以外は忘れ去る努力をした。だからこそ、超一流になれたのだ。シンプル化といえば、ハッカーは生活から不必要なものをなくす習慣がある。ほんとうに大切かどうかで選別するからだ。イノベーターも余計な飾りはばっさりとそぎ落とす強い意志がある。」

・「『食べ物や着るものであれこれ意思決定したくない』と言うが、だからといって政権運営が向上するのか。いろいろな楽しみを持つことは生活のアクセントにならないのか。独創性は無意味なのか。たまにはバーッとやりたくないのだろうか。こうした考え方については、ミネソタ大学のキャスリーン・ボーンズ教授の実験で証明されている。小さな判断がいくつも重なると、その後の自制心がなくなることが判明したのだ。(中略)だから、多忙な人物や有力者は、邪念を取り払う瞑想を好み、かっちりとした日課にこだわるのである。こうすれば余計なことに気を取られることなく、重要な意思決定で力を発揮できるからだ。」

「天才や大統領は、無意味な選択作業を生活から徹底的に排除している。生活をシンプル化し、思索の時間を確保する。発明家や起業家は『この製品はもっとシンプルにならないか』といっていつも自問自答している。そうやってたどり着いた答えは、単なる『良い製品』ではなく、『驚異的な製品』になる。その証拠に、ステーブ・ジョブズはシンプルであることを、『究極まで洗練された状態』と表現した。」

・まず徹底的にムダを省き、低コスト、少人数で大きなことが出来る方法を考える。

・「10倍思考を実行する。(中略)男の名はイーロン・マスク。南アフリカ出身。Tシャツにジーンズというラフな姿で指示を飛ばす。いまや伝説の億万長者だ。(中略)NASAが膨大な数の職員をもってしてもできないことを、小さなチームで成し遂げる。これがマスクのビジョンだった。(中略)これだけの壮大なビジョンを支援してもらうためには、自分自身がスポットライトを浴びる必要があることはわかっていた。人々の信頼を得なくてはならない。そこでマスクは話術を磨き、常に、『人類の未来のため』という枕詞をつけて語り続けてきた。(中略)イーロン・マスクを一流に押し上げたスマートカットがある。それが、『10倍思考法』だ。(中略)並外れた次元で物事を考える姿勢である。10倍思考法で有名なのは、アストロ・テラーだろう。さまざまな最先端プロジェクトを手がけるグーグルの研究部門『グーグル X』の所長で、人工知能分野の博士号を持っている。エンジニアだらけの組織に雅ツンと衝撃を与える刺激役として招かれた。彼の仕事を一言で言えば『でかい夢』を語ることだ。(中略)その秘訣を尋ねると、不思議な答えが返ってきた。『10%改善するよりも、10倍いいものを作るほうが簡単なんですよ。(中略)ほんとうに大きな改良は、何らかの方法で最初から作り上げる必要があります。常識となっている前提を捨てさらなければなりません。(中略)逆に言えば、10倍の目標を掲げれば、否が応でもスマートカットを繰り出さざるを得ないのだ。『まず不安を捨てる。知についてオープンで誠実な姿勢を持ち、新しいことに独創性と情熱をもって挑戦する。結果は真正面から受け入れる。こういうことができたら、10%の改善のときと同じ時間、同じ人材でも、本当にすごい解決策にたどり着きますよ』とテラーは語る。イーロン・マスクはこれを、『原点をみつけた状態』と言う。(中略)今、多くの企業が掲げる”イノベーション”は、往々にして『もっと速い馬』を血眼になって探しているに過ぎない。自動車を創造するという発想がないのだ。原点がみつかれば、通念から解放される。『苦しい努力をしなくても、適切な見方にたどり着ける』とテラーは言う。『例えば林でアーチェリーをやっていても機が邪魔で向こうに届きません。手当たり次第に矢を射る人もいるでしょう。デモ一番いいのは、自分自身が動き回って、向こうまで見通せる地点を探すことです。力任せで時間を無駄に使うより、問題の枠組みを作り直せばいいのです。そのためには勇気と独創性が必要です。』」

・「高い理念や目標を掲げる有力ブランドについて株価の動きを10年にわたって調べたところ、非常に興味深い事実が浮かびあがった。利益追求にとどまらず、崇高な目的を掲げるブランドは、S&P500(米国の代表的な500銘柄の株価を基に算出している株価指数)よりも大幅に高い株価を実現している。(中略)この理想的な銘柄は、いわば『低いところの果実』としての利益のみならず、『高いところの果実』を目指す目的をもっていたことになる。なぜか。何よりもまず人間は、崇高な理想や大きな目的に共感しやすい点が挙げられる。だから客も投資家も口コミも集まりやすいのだ。ただ大風呂敷を広げれば、人々がついてきたり、実現したりするとは限らない。単にまっとうな大義名分を振りかざしても、支持は得られない。人々のモチベーションを高める必要があるのだ。(中略)人類を月面におくると高らかに宣言したケネディ大統領しかり。(中略)不可能と思われるゴールに敢然と立ち向かった。だから(中略)人類は月面に降り立ったのだ。皆、スマートな仕事の仕方を心得ている。自分に信じた道を熱く語る。イーロン。マスクなら『最初の一歩は、何でもいいから実現できることを示すのだ。そうすれば見込みありと見なされる。』と語る。」

・「幸福感を得るために、『大きいもの、いいもの』をめざす必要はない。前進を続ければいいのだ。」

・9つの鉄則「鉄則1:ラダー(成功の階段)をハックする。」「鉄則2:メンターとともにトレーニングを積む」「鉄則3:迅速なフィードバックで最適化する」「鉄則4:プラットフォームを活用する」「鉄則5:波を見つけて波に乗る」「鉄則6:スーパーコネクターを見つけ、自らもスーパーコネクターになる。」「鉄則7:成功の連鎖をつくる」「鉄則8:シンプルを極める」「鉄則9:10倍速思考を実行する」

 

繊細な女性のための 大胆な働き方 男社会でのびやかに成功する10のヒント タラ・モア 講談社

ここの所ずっと、啓蒙書の類ばかり読んできて、疲れてしまった。ビジネス書とかは、大体同じ分野を何冊かよんだら、内容が被っている事が多く、その分野の古典を幾つか読んで、それぞれキャッチアップしていけばいいのではないかと思うようになりまいした。オンラインの特性で、こういった啓蒙書をしばらく購入していると、そればっかり目に入ってくるのが、また、良くない。しばらく良質な本屋にこもりたい気分です。

さて、話がずれましたが、こちらも啓蒙書の類で、無事に読み終わりました。内容は聞いたようなことも多いけれど、一つだけ、女性に特化した部分が非常に良かった。自分の抱えている問題が、意外に女性の一般的な問題なのだと理解できただけでも、発見のように思います。今までの行き方を振り返ると、人生の時間、人に遠慮ばかりしてもったいなく使っているな、とちょっとため息もでてしまいましたが、、、、。やはり、男性でいるときっと気がつかないと思いますが、女性として生きるのは、結構まだまだ面倒なところが沢山あるなと思います。選択の自由があるとか、色々いわれるけれど、社会の中で、補助的な役割ばかりしていると、勿論それ以上のスキルはつかないのはあたりまえで、女性が能力がないのではなく、ポジションにつけないからスキルがつかない、と自分の立場を振り返っても痛感します。私の人生かえしてーーー、笑。

具体的に、どのような問題があるか記載してありましたので、なんとなく抱えている問題が顕在化して具体的に対応できるのが良いと思いました。