「すべて真夜中の恋人たち」 川上未映子 講談社文庫

何もない中から言葉を紡いで小説を創り出すというのは、難しい作業で、その難しい作業を殊更丁寧にして作り上げた作品世界。この作品世界に共感できるかできないかは別として、こういった世界を言葉で作りだせるのは、相当その世界観に、表現するものに自身やビジョン、もしくはそれを創り出す意義がないと出来ない作業だなと思いました。そういう意味で、この作家さんは(好きか嫌いかは別として)強いなと思いました。

何か所か、急に物凄い描写が出てきて圧倒されます。そのメリハリがすごい。人物の書き分けはあざといぐらいですが、よく最後にうまく集約されるものだなと思う感じでした。個人的には、終わり方だけが残念、、、。そこが一番重要なのかもしれないけれども、その最後の一ページがなければ良かったのに。