独立国家のつくりかた 坂口恭平 講談社現代新書

 

自分で考えるという事を追求すると

こんな生き方になり、それがまた時代にあっているなと。

何だかとても面白い本でした。

自分で考えながら生きていると、本当に楽しいだろうなと思った私自身は、まだまだ枠の中ですね。何がすごいって、この著者の行動力と、周囲を巻き込む説得力がすごい。

 

1996年に、先輩と国家の制度がなくなり、会社が国境を越えて国の様な新たな役割を果たすかもという議論をしていたことを思いだしました。現在のGoogle等、現実は少しそういう状況い近づいている? 銀行勤務時代も、矢張り1990年代にスタバに支店を開設する案をだしました。上司に話したら即座に却下されましたが、それも何年も後に別の会社が現実にしており、時代が追い付いてきたとかうそぶいているのですが。本当は、アイディアは自分で実現しないと、ただの想像なので、この著者の様に、徹底して実行されている姿勢が本当に素晴らしいと思います。

「人生を変えるクローゼットの作り方」ベティ・ホールブライシュ&レベッカ・ベイリー 訳・野間けい子

この本を、人生で必要としない人も世の中には沢山いると思うけれど、私には特別の一冊でした。服が女性の人生にどのぐらい関わっているのか、女性の人生っていかに変化が多いか、そして服がとてもプライベートで深くかかわっていると同時に、外に開かれる心の窓であるというところに、とても惹かれます。勿論私は洋服が大好きなので、サイズの話とか、服飾業界の話を読んでいるだけでもとても楽しいです。ただ、日本語のタイトルはもう少し違うもの方が良いのではないかなと思いました。どちらかというと、洋服を通して面白い人生を語っているのに、このタイトルだと内容を誤解してしまいそうな気がします。まあ、間違ってはいないのだけれども。

忘れられた巨人 カズオ・イシグロ ハヤカワepi文庫

読むたびに孤独な感覚に胸が痛くなる、カズオ・イシグロさんの作品。自分自身が海外に移住し、子供が二つの祖国を持つようになってから、より一層国境や言語を超えて活躍される作家の方たちに興味を持つようになりました。私が興味を持った当初は、越境作家自体が注目を浴びていたわけではないのですが、いつの間にか沢山の方が越境作家として認知されるようになっています。その中でも、大御所の一人。

自分の子供達が将来、どのように故郷をとらえるのかと考えながら読むからか、どうしても、その底にある深い孤独を感じないわけにはいかず、読みながら複雑な気持ちになります。文章や、物語世界が素晴らしいのは言わずもがな。文化を超えて生きているからこそ、人類の作り上げた文明、文化に非常に洞察の深い作品が心に残ります。ノーベル文学賞を受賞された後に、この作品を読了。

BASQUIAT BOOM OR REAL SCHIRN KUNST HALLE

BASQUIAT – SHIRN KUNST HALLE

フランクフルトのシリン美術館で開催されているバスキア展に行ってきました。結構楽しみにしていたのですが、思ったほどは、ワクワクせずに終わりました。でも、当時の時代風景を想像しながら作品を見るのは面白かったです。多分、彼の場合は、作品だけを見るのではなく、その時代を感じながら鑑賞するのが正しい方法なのかなと思いました。なので、当時のミュージックシーンを想像させるような展示方法や、同時代を生きたシュナーベルがバスキアをとらえた映画を上映していたのは、良かったと思います。

丁度直前に、シュナーベルの映画を見ていたので、当時のアートシーンで活躍した人達は、どんな時代の空気を感じていたのだろうか。その台風の目となっていた人たちのパワーや、人生を考えた展覧会となりました。

騎士団長殺し 第一部 顕れるイデア編 / 第2部 遷ろうメタファー編 村上春樹 新潮社

ハルキストではないのですが、村上春樹さんの作品は、目に止まると読むということを続けています。私の中では、「村上春樹さん=物語の力」。そして、同じような物語世界の繰り返しと批判されることもある。ということ。いつも読み始めて半分ぐらいは夢中になって読むのですが、後半はいつも、自分とは違う世界だなと思い、最後まで何とか読み終えるということを繰り返しています。

「騎士団長殺し」は、特に絵画の勉強をしていたこともあって、前半はとても面白く読み進めました。また、作家が創造する過程が、絵画の制作に反映しているようで、とても興味深く読みました。フィクションなので、村上春樹さん自身の創造の過程はこのような道筋をたどるのかなと、想像してみるのも楽しかったです。

村上作品では、昔でいうところの少し洒落た雰囲気の中で、邪悪なものも取り込まれながら話が進んで行き、その表現力も驚嘆するべきものですが、いわゆる一般的な文学とは違う雰囲気を纏っているなといつも思って読了してしまいます。少し、文学というより、ファンタジー文学のような、、、。

しかしながら、今回の作品は、今までの作品よりも随分とご自身のプライベートな部分も表現に入っていたのではないかと思い、今までの作品との違いを少し感じました。むしろ今後「物語」ということを考えずに作られた作品が読めると面白いのにと希望する次第です。

思えば時代も随分変わり、当時の村上春樹フィーバーのようには作品を読めなくなっているかも。

ジキルとハイド Jekyll & Hyde The English Theater Frankfurt

ジキルとハイド The English Theater Frankfurt

 再び、フランクフルトのThe English Theater。
「ジキルとハイド」のミュージカルを見ました。素晴らしかった。舞台の切り替えや、音楽、歌もよかったのですが、なんといっても主演の俳優さんの熱演。ジキルから瞬時にハイドに切り替わる瞬間、表情や振る舞いで一気に別人になる様が圧巻でした。外見が同じはずなのに、これだけ筋肉や体の使い方で違う人に見えてくるとは。俳優ってすごい。

 人間の暗黒面も書くので舞台演出も退廃的でしたが、それだけに魅惑的でもあり、女性陣の歌も魅せました。かなり現代性のあるテーマなのかと思います。その変容は、精神的な問題とも置き換えられるし、場合によっては薬物問題もとらえることもできるかもしれません。欲望とか。だんだん深みにはまっていく感じなど、多かれ少なかれ、見ながらドキッとする人はたくさんいるのではないかと思われます。

 俳優の早変わりの演技を間近に見る醍醐味があり、間近で聞く歌や演奏もよく、特殊効果のない舞台でストレートに見る価値大という作品でした。

ミーナの行進 小川 洋子 中公文庫

私自身のとても私的な部分に関わるところで、読みながら衝撃が走った作品。
両親や祖父母、そして私自身も一時期住んでいた神戸の古き良き世界が、(実際に目にはしていないのに、語り継がれていた世界)そのまま目の前に拡がっていて本当に驚いた。その上に、清涼飲料水の工場が出てきた時点で、父がやはり清涼飲料水の会社に関わっていたため、これは、私達のことを書いたのか、と思ってしまうほど、プライベートにリンクした作品。

物語の雰囲気は、なんとなく死や破壊に向って進んでいるように見えるのに、最後にその物語に閉じ込められた世界から急に現実に飛翔するくだりで明るい希望を見出した作品。

UDO LINDENBERG SAP Arena Mannheim Germany

 コンサートに行きました。71歳のドイツのロック歌手。東ドイツで初めてコンサートをした人。歴史を負っているからか、ドイツではとても人気がある、というか伝説の歌手。

 とにかく、サービス精神旺盛なコンサートでした。お客さんを喜ばせたいという気持ちが嫌というほど伝わるので、アメリカのポップシンガーのような大仕掛けがなくても、盛り上がりました。(いやいや、仕掛けも結構あったのだけれども。)

 さすがに高齢で、パフォーマンスに限界がありましたが、その存在感は抜群で、若い歌手を交えて大きな楽団的にコンサートを構成して隙のない、でもとても人間的なコンサートで幸せな気分になりました。政治的、というか昨今の世情に苦言を申しても、過去の実績があるので、まあ納得という感じかな。
 一緒に歌った、若い人の歌唱力はすごくって盛り上がるけれど、やはり、本人が歌うと観客の雰囲気がまた全く変わる。何よりも、一緒に盛り上げている歌手や音楽家達は、皆ウドを尊敬しているんだなということが伝わり、とても良かった。

 客層は、過去出むいたコンサートのどれよりも高齢でしたが、子供の姿や家族連れもあり、なんだか昔を思い出して盛り上がっているのではないかという人も沢山いる。時の流れを感じるコンサートでした。ちょっとある意味物悲しくなってしまったりして、、、。

新装版 銀行総務特命 池井戸潤 講談社

池井戸作品、三作品を続けて読んでいる。その第2弾。先の「新装版 不祥事」と比較すると、内容が重い、暗い、救いがない。最初は軽い話から始まって、段々出口のないリアルな嫌な話が詰まっているという感じ。自分が銀行に勤めていたからかも知れないが、最初は面白く、いや、最後まで面白く読みはしたが、読んでいて居た堪れなくなるような気分で、読後感が悪かった。お話として読めれば面白いのだろうけれど、以外にリアル。なので、いつも池井戸作品を読んでいて、これ作品にしていいのかな。これで売れていいのかな。と少し思ってしまう気持ちが、この作品では更に強くなった。作品を書くのは簡単なことではないのは勿論理解しているつもりだけれども、話の殆どの骨格が、ほぼ現実に転がっているリアルだとすると、それをネタにしていいのかな、と少し思ってしまう、、、。きっと銀行員だったら誰もが経験しているような話とか、聞いたような話とかばかりなのだと思う。リアルがこうならば、わざわざ話を読んで暗くなる必要はないかも。