現代アートビジネス 小山登美夫 アスキー新書

 

昔の本の再読。美術業界に興味があって読んだのですが、美術業界周辺、特に現代美術周辺の事柄が具体的に詳しく書いてある良書。奈良美智さんや、村上隆さんの展覧会の企画等をされたギャラリストの著者の来し方もわかり非常に面白いです。

欧州のアートメッセ等に足を運ぶこともあるので、展示側の話を聞くのも、今後ギャラリー巡りの参考になります。

一般的にうやむやになっていてわかりにくいこと(ビジネスの側面)をはっきり書かれておられるので、すっきりします。美術業界、美術品、アーティスト等を見る視点が変わるかも。

「ピーターのくちぶえ」作・エズラ=ジャック=キーツ 訳・きじまはじめ 偕成社

もしかしたら、読み聞かせをした娘よりも、読んでいる親の方が好きになってしまったかもしれない作品。

コラージュ等色々な技法をもちいた、音楽で例えるとジャズの様な雰囲気の、おしゃれな色彩感覚の絵が、大人の目も楽しませてくれる作品です。美しさもそうですが、何よりも登場人物の少年の子供らしい行動の数々が、子供の世界の豊かさを思いださせてくれます。毎日沢山の予定を子供に入れて、口を開ければ、宿題、とかあれやって、とかばかり話しているような日常をとても反省してしまいました。私自身は子供の目線におりることがあまり得意な方ではないのですが、この絵本を読むことによって、ほっと一息を突いて子供がどんな世界を見ているのか、その世界が大人のきまりでは割りきれないどんな素敵なものなのかを思いださせてくれる絵本でした。

「すべて真夜中の恋人たち」 川上未映子 講談社文庫

何もない中から言葉を紡いで小説を創り出すというのは、難しい作業で、その難しい作業を殊更丁寧にして作り上げた作品世界。この作品世界に共感できるかできないかは別として、こういった世界を言葉で作りだせるのは、相当その世界観に、表現するものに自身やビジョン、もしくはそれを創り出す意義がないと出来ない作業だなと思いました。そういう意味で、この作家さんは(好きか嫌いかは別として)強いなと思いました。

何か所か、急に物凄い描写が出てきて圧倒されます。そのメリハリがすごい。人物の書き分けはあざといぐらいですが、よく最後にうまく集約されるものだなと思う感じでした。個人的には、終わり方だけが残念、、、。そこが一番重要なのかもしれないけれども、その最後の一ページがなければ良かったのに。

「人生を変えるクローゼットの作り方」ベティ・ホールブライシュ&レベッカ・ベイリー 訳・野間けい子

この本を、人生で必要としない人も世の中には沢山いると思うけれど、私には特別の一冊でした。服が女性の人生にどのぐらい関わっているのか、女性の人生っていかに変化が多いか、そして服がとてもプライベートで深くかかわっていると同時に、外に開かれる心の窓であるというところに、とても惹かれます。勿論私は洋服が大好きなので、サイズの話とか、服飾業界の話を読んでいるだけでもとても楽しいです。ただ、日本語のタイトルはもう少し違うもの方が良いのではないかなと思いました。どちらかというと、洋服を通して面白い人生を語っているのに、このタイトルだと内容を誤解してしまいそうな気がします。まあ、間違ってはいないのだけれども。

エマおばあちゃん 文 ウェンディ・ケッセルマン 絵 バーバラ・クーニー 徳間書店

娘に読んで、「一気に」に好きになった本です。おばあちゃんが、今まで秘めていいたクリエィテビティを炸裂させて、成功していく過程が、幸せへの過程とぴったりと重なっていいるところが、心から幸せな気分になる一冊。私自身が絵を描くのが好きだからかもしれませんが、特別な一冊になりました。絵そのものも素敵。自分の心に寄り添って、自分らしく生きていくことの偉大さを感じられる絵本。子供の人生もこのように花開いてほしい。

「マノンの肉体」辻原登 講談社

読み始めてから、「久しぶりに文学作品を読んだ」とはっとしました。最近実用本や、インターネットサイトばかり見ていて、純然なる文学作品を読んでいなかったので、その文章の格調と、面白さに少しびっくりしてしまいました。最近の若い作家の方とも違う風格のある面白さ。今文学作品と呼ばれているものと何が違うのだろうかと考えながら作品を読みました。

きっと映画やドラマの影響、またエンターテイメントと純文学との境い目がうやむやになる中、今の作品はプロットを重視する作品が多く、文章が全く違うのではないかというのが、今のところの個人的な感想です。

収録されている作品では、個人的には「マノンの肉体」が心に残りました。ふとしたことから始まる話がいつのまにか、文章の意外な連なりによって、転がり、最後にあっという幕切れになる構成が、素晴らしかった。題材に使われている作品も鑑賞したくなる、手練れの作品。

忘れられた巨人 カズオ・イシグロ ハヤカワepi文庫

読むたびに孤独な感覚に胸が痛くなる、カズオ・イシグロさんの作品。自分自身が海外に移住し、子供が二つの祖国を持つようになってから、より一層国境や言語を超えて活躍される作家の方たちに興味を持つようになりました。私が興味を持った当初は、越境作家自体が注目を浴びていたわけではないのですが、いつの間にか沢山の方が越境作家として認知されるようになっています。その中でも、大御所の一人。

自分の子供達が将来、どのように故郷をとらえるのかと考えながら読むからか、どうしても、その底にある深い孤独を感じないわけにはいかず、読みながら複雑な気持ちになります。文章や、物語世界が素晴らしいのは言わずもがな。文化を超えて生きているからこそ、人類の作り上げた文明、文化に非常に洞察の深い作品が心に残ります。ノーベル文学賞を受賞された後に、この作品を読了。

BASQUIAT BOOM OR REAL SCHIRN KUNST HALLE

BASQUIAT – SHIRN KUNST HALLE

フランクフルトのシリン美術館で開催されているバスキア展に行ってきました。結構楽しみにしていたのですが、思ったほどは、ワクワクせずに終わりました。でも、当時の時代風景を想像しながら作品を見るのは面白かったです。多分、彼の場合は、作品だけを見るのではなく、その時代を感じながら鑑賞するのが正しい方法なのかなと思いました。なので、当時のミュージックシーンを想像させるような展示方法や、同時代を生きたシュナーベルがバスキアをとらえた映画を上映していたのは、良かったと思います。

丁度直前に、シュナーベルの映画を見ていたので、当時のアートシーンで活躍した人達は、どんな時代の空気を感じていたのだろうか。その台風の目となっていた人たちのパワーや、人生を考えた展覧会となりました。

Matisse – Bonnard „Es lebe die Malerei!“

Matisse – Bonnard „Es lebe die Malerei!“

Bonnard を見に行った展覧会。眩いばかりの光に包まれて幸せな時間を過ごしました。この色彩感覚が本当に特別だと思います。部屋に飾れたらどんなに良いだろうと思いながら、2回展覧会に赴きました。

勿論、企画として同じ部屋やモチーフで創作をしていたマチスの作品との比較も非常に興味深く、比較することにより、それぞれの画家の特性がさらに際立つ展示になっていたと思います。

娘を連れて行きましたが、その色彩を少しでも記憶の奥底に残してくれていればいいなと思います。

Julian Schnabel: A Private Portrait (2017)

Julian Schnabel: A Private Portrait (2017)

http://daskinoprogramm.de/julian-schnabel-a-private-portrait/frankfurt-am-main/

昔からJulian Scnabelの作品が好きでしたが、映画を見てその人柄も好きになりました。絵画、サーフィン、時代、こんな人生もあるのだなと、ただただ驚嘆するばかり。

ご本人とは全く関係がありませんが、こういう時代を作る竜巻のような人に育てられた子供の内面世界も気になりました。