ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん(世界傑作絵本シリーズ スウェーデン)エルサ・ベスコフ 福音館書店 

きれいな挿絵の絵本で、(リンクの写真では、その魅力が少し伝わりにくいのですが。)絵に惹かれて何度も手に取っています。とても惹かれる本なのですが、長く語られている本なのだと今になって知りました。

絵本の要素には、物語の魅力や、挿絵の魅力などありますが、この作品は、とにかくこの絵に惹かれます。それが物語の内容にぴったり。小さくなったプッテと、そのまわりにいるこけももたちなどの可愛らしさに、物語の味わいが一層深まります。

一本一本の筆さばき、彩り、それらがその後ろに隠れているどれだけの文化を伝えることでしょうか。子供のころの、まっさらな心に色々なイメージを運びこむ、この絵本を読むという行為がどれほど重要なことか、ついつい考えてしまいます。

ここのところ、何冊が立て続けに違った種類の絵本を読んでいるなかで、よい絵本というのはどんなものだろう、と考えることが多かったのですが、長く語り継がれる作品んでいるなかには、ものすごい引力を感じます。

その魅力は、絵だけ、物語だけ、などと切り離せません。一つだけ思うのは、マーケティング等で調査されたものではなく、その作家さんの物語世界がひろがっていること、そしてそれがその作家さんの生きる背景の文化をすくいとっていて、矛盾するようですが、最終的には普遍性があること。頭で作られたものではない、物語の世界がひろがっていること。そんなことが大切なのかなと思いました。

大衆に受けるということよりも、個人の作品世界を深めるということの方が大切なのではないでしょうか。人間の奥底に広がる、深くて濃い世界を気忙しさに紛れずに見つめていくような生き方をしていきたいなと、個人的には思います。

「連舞」「乱舞」 有吉佐和子 集英社文庫

連作を2日続けて読了いたしました。

有吉佐和子さん、何を読んでも本当に一度読み始めたら止まりません。その筆力は信じられないほどです。今回はしかしながら、連作ではありましたが、前半にあたる「連舞」がより感情移入できました。

詳しく書くと、内容が分かってしまうのであまり書きませんが、「乱舞」は、そもそもの設定において、主人公の気づきがこんな遅いということがあるのかな、と疑問に思い、物語に集中しきれませんでした。

成人してからの話で主人公の燃えるような思いよりも、細かな政治的な動きに焦点があたり、且つ主人公以外の登場人物の書かれ方の分が悪すぎて、主人公が美しく賢いという設定というよりも、他が駄目すぎると読めてしまい、共感しきれず終わりました。

せめて、異父姉妹の妹、ならびに妹の書き方がもう少し違えばよかったの二と思います。幼少からの苦難の時代が、妹がいることで起こったことであっても、その妹を最後に受け入れるような、妹のよさを引き出すようなそういう結びを期待していました。少し器が小さいように感じてしまうのです。しかしながら、この時代の作家が描く女性主人公は、芯が強い人が多いので、また、頂点に立つためにはある程度の性格の悪さとも見えかねない強さは、仕方がないかもしれません。

そのような具合でしたので、主人公がこのような峻厳さを持つまでの過程を描いた「連舞」がより楽しんで読めました。特に、ドラマの起こし方が、面白くて、映像が目に浮かぶようでした。このようなドラマティックな動きが面白いと思うのも、作者の筆力の素晴らしさがあるからこそ、受けいられるものと思います。

色々書きましたが、有吉佐和子さんの筆力、安定感というかなんというか。毎度のことですが本当に驚かされいます。もはや、話の主人公よりも、作者自身がどのような生い立ちがあるのか、のほうに興味が出てきてしまいました。

もう今の時代では、古典といった雰囲気ですが、時代が変わって読んでも面白い、日本舞踊に造詣があれば更に面白い、すごい昭和の小説です。