「連舞」「乱舞」 有吉佐和子 集英社文庫

連作を2日続けて読了いたしました。

有吉佐和子さん、何を読んでも本当に一度読み始めたら止まりません。その筆力は信じられないほどです。今回はしかしながら、連作ではありましたが、前半にあたる「連舞」がより感情移入できました。

詳しく書くと、内容が分かってしまうのであまり書きませんが、「乱舞」は、そもそもの設定において、主人公の気づきがこんな遅いということがあるのかな、と疑問に思い、物語に集中しきれませんでした。

成人してからの話で主人公の燃えるような思いよりも、細かな政治的な動きに焦点があたり、且つ主人公以外の登場人物の書かれ方の分が悪すぎて、主人公が美しく賢いという設定というよりも、他が駄目すぎると読めてしまい、共感しきれず終わりました。

せめて、異父姉妹の妹、ならびに妹の書き方がもう少し違えばよかったの二と思います。幼少からの苦難の時代が、妹がいることで起こったことであっても、その妹を最後に受け入れるような、妹のよさを引き出すようなそういう結びを期待していました。少し器が小さいように感じてしまうのです。しかしながら、この時代の作家が描く女性主人公は、芯が強い人が多いので、また、頂点に立つためにはある程度の性格の悪さとも見えかねない強さは、仕方がないかもしれません。

そのような具合でしたので、主人公がこのような峻厳さを持つまでの過程を描いた「連舞」がより楽しんで読めました。特に、ドラマの起こし方が、面白くて、映像が目に浮かぶようでした。このようなドラマティックな動きが面白いと思うのも、作者の筆力の素晴らしさがあるからこそ、受けいられるものと思います。

色々書きましたが、有吉佐和子さんの筆力、安定感というかなんというか。毎度のことですが本当に驚かされいます。もはや、話の主人公よりも、作者自身がどのような生い立ちがあるのか、のほうに興味が出てきてしまいました。

もう今の時代では、古典といった雰囲気ですが、時代が変わって読んでも面白い、日本舞踊に造詣があれば更に面白い、すごい昭和の小説です。