蜂蜜と遠雷 恩田陸 幻冬舎


直木賞。
確かに直木賞、という感じでした。
読んでいる間は夢中になりましたが、漫画みたいな描写、現実にはいなさそうな登場人物(風間塵)、でもぐいぐい読み進める物語の力があるという感じでした。これは、批判に聞こえるかもしれないが、批判ではありません。ベースはあるとはいえ、これだけの架空のものを書き上げる力、胆力が、ただただすごいと思う。

あまりにも天才達の作品なので、読んでいる間は羨望の気持ちで読み進めるが(表現するのが好きな子供達はものすごく夢中になりそう)読み終わると忘れてしまった。それは、多分こちらの読み手年齢のせいで、自分の残りの人生に関係がない世界だと思うと、記憶に段々残らなくなっていく。なので、若い方が読むと、何か強烈に一つのことに打ち込みたいとか、特別な存在になりたい、とか、なにかしらの影響を受けるのかもしれない。

今の年齢の自分に一番落ち着いて読めるのは、やはり、高島明石の描写あたりだろうか。哀しい。若さが輝いて見えるというのは、本当です。

普通に物語の人物造詣として個人的に好きだったのは、栄伝亜夜さんでした。この人物は、もしかして作者に似ているのかななどと、想像しました。一番いわゆるこういう作品で書かれるであろうプロトタイプから逃れられた人物描写だったと思う。一件プロトタイプらしくはあるのだけれども、何か個性を感じられました。

ただ、一番メインになりそうな風間塵には、正直全く感情移入ができませんでした。残念。彼は実は、人物ではなく、コンテストに舞う音楽の妖精(苦笑)とかだったのではないだろうか。(皮肉です。)

作者が音楽が好きな方と聞いているので、コンクールの選曲にかなり力を入れているとおもうので、もう一度、曲を聴きながら、読んでみてもいいかなと思います。

が、後半は、話は読まないで音楽だけ聴くかもしれません。後半よりは、前半が私には面白かったです。音楽という芸術を、文章で表現するというのは、本当に空恐ろしい試みだと思う。

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