森鴎外の息子、森茉莉さんの、独特の世界観の本。何故か、旅先に持っていくことが多く、イタリアの海岸沿いのホテルに泊まった時に、暴風雨の中眠れぬ夜に読んだ記憶もある。
作者の森茉莉さんは、父親に溺愛されて、特に西洋の最上のものを知り尽くされていたが、生活力には乏しかった。とい話をどこかで読んだりもしたが、その精緻な記述や豪奢な想像の世界に圧倒される。
森鴎外の住んでいたドイツにいるせいか、森鴎外の「舞姫」が二重写しとなり、日本で読んでいた時と別の感慨にふける。「舞姫」も、鴎外が日本に帰国したから美しい話になったのか。
当時は、相当なエリートでないと海外に行くことがなかったと思われるので、海外旅行、いや海外移住も珍しくなくなった今、森親子がいたら、別の物語がうまれるかもしれない。